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Yondana

読んだこと、学んだこと、楽しんだこと、思ったことを書き留めてしまっておく場所。

「空中ブランコ|義父のヅラ」の不謹慎衝動と私の白紙衝動

 

こんにちは。

活字だけで声を出して笑ったのはこの本くらいじゃないかと思います。 

 

奥田民生の伊良部シリーズ「空中ブランコ

伊良部先生が出て来る伊良部シリーズとして、「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」「町長選挙」の3部作になっています。

空中ブランコ」のタイトルでアニメ化もされていますね。

私がここで紹介するのはすべて小説の方です。

 

 

一番の魅力は天才医師か藪医者か、最後まで判断の付かない伊良部(いらぶ)先生。 

どこか、「弁護士のクズ」に似ている感じがしますね。 

 

伊良部先生の診察や治療は、正直言って「何もしない」か「何の役にも立たない」か「火に油を注いでいる」か。 

この先生は患者の症状を面白がってたきつけたり、「別にいいじゃん」で放置するばかりです。 

 

なのにいつの間にか解決している。 

 

「最初からこうなることを見越してた?」 

「全部タダの偶然?」 

 

毎回この疑問を残して終わります。 

 

『義父のヅラ』( 「空中ブランコ」収録)の個人的な感想

特に面白かったのは、「空中ブランコ」の中の「義父のヅラ」。 

 

真面目で順調にキャリアを歩み、家族にも恵まれている男性医師が、「不謹慎なことをしたくてしたくてしょうがなくなってしまう」という話です。 

 

シャンパンタワーを見たら壊したい、義父のヅラをみたらはずしたい。 

思いっきり不謹慎なことをする感覚、したあとのみんなの反応を想像すると、衝動が抑えきれなくなる。 

 

まだ実行をしたことはないけど、いつ行動に移してしまうのか自分でも怖くなって来院します。 

 

この感覚、私はすごく共感できます。 

デリケートに扱ってきたものほど、煩わしくて破壊したくなる。 

大切に積み上げてきたものほど、たくさんの糸で自分に絡みつきます。 

その糸が絡みはじめたとき、ゆっくりほどくのではなく、ハサミでばっつり切りたくなってしまう。 

 

自分のなかでは「白紙衝動」といつのまにか名付けていたのですが、 

なにもかもを白紙に戻したくなる衝動です。 

 

たとえば仕事だったら、ひとつひとつは小さなトラブルでも、それが束になって自分にのしかかってきたとき、 

「会社の人全員から忘れられてしまいたい」 

「いなくなりたいというより、いなかったことになりたい」 

という衝動に駆られます。 

 

「明日の新幹線を予約して、遠くに行ってしまおうかな。騒ぐ人達が居るかもしれないけど、出発した私にとっては些末なことに思えるんだろうな。」 

 

こんな気持ちです。 

 

 

自分に絡みつくことから逃れたい。 

大事なことだからこそ煩わしい。 

 

”ほどほど”の感覚をとるのが苦手な、完璧主義で生真面目な人間の考えることです。 

本来、大事な事だからといって肩がこるわけではない。 

煩わしくならない程度の力のかけ方で良いんです。 

 

でも、それが上手く出来ない。 

だから、限界が来たときに一気に0にしてしまいたくなる。 

白紙衝動です。 

 

けど、白紙にするのもそれなりにエネルギーが必要です。 

「私の力では無理なので、プロジェクトを下してください。」と掛け合うのも精神力をすり減らすし、 

無駄に強い責任感がそれを良しとしません。 

 

そこで出てくるのが、「思いっ切り不謹慎なことをして後戻りのできない状態にする」です。 

 

・大事なものを壊しちゃう 

・超偉い人に恥をかかせちゃう 

・その場の雰囲気を一気に壊しちゃう 

 

などなど。 

迷惑極まりないですね。 

 

自分にストッパーをかけることが出来ないから、自分の外側に混乱を起こしてしがらみから逃れるんです。 

 

「義父のヅラ」の主人公に、私はとても良く似ていると思います。 

(私の個人的な読み方の中では、ですが) 

そして、似ている人って結構いるのではないかと思います。 

学校で嫌な事があるときに、「学校が火事になっちゃえばいいのに」って考えてたタイプの人とか。笑 

 

同じ感覚を持っている人には、ぜひ読んでいただきたいです。 

このシリーズに出てくる患者さんに共感できる部分があると、不思議に癒されるし、なくてもただただ笑えます。笑

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